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Cyber PortとIBM i のAPI接続に短期間で成功!
両社の知見と技術の掛け算でさらなる効率化を実現

目次


港湾物流DXのプラットフォームCyber Port
Cyber Portへの参加成功とシナジー効果を高めた両社の取り組み
開発内製化の希望を知りベル・データが考えた支援方法
「想像力」と「創造力」の発揮により予想以上の速さで開発が進行
Cyber Port参加成功後の新たな取り組みと今後の展望

港湾物流DXのプラットフォームCyber Port

船舶の発着・停泊などを目的に整備された海上輸送の結節点であり、物流の要を担う港湾。その港湾物流全体の課題として、民間事業者間の手続きが「従来の紙、電話、メールなどが主流で非効率」であり、「事業者ごとに手続きの方法が異なるため、業務の進め方に一貫性がない」ことが挙げられる。

 これらの課題を解決すべく、国土交通省が主導となり、手続きの電子化及びデータ連携による業務効率化、生産性向上を目指すプラットフォームCyber Portの運用を開始した。Cyber Portの使用により、港湾物流手続きの電子化、事業者間の一貫対応が可能に。さらに、業務進捗の可視化によりリアルタイムで情報共有できることで、それまで頻繁だった状況確認のための電話問合せ減少にも繋がっている。

 2020年11月、国交省はCyber Portと各事業者の既存システムとの連携が可能になる「API接続」に必要な仕様を公開。API接続とは、異なるソフトウェア同士でもプログラムの共有が可能となる連携方式だ。API接続の仕様公開から約1年半後の20222月からの本格運用開始に向けて、国交省は検証期間を設置。この期間で参加事業者とCyber Portの機能運用を徐々に拡大しながら、検証を重ねた。

成功要因は両社のシナジーと信頼関係

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365日、システムが堅牢に動き続ける「本牧ふ頭BCコンテナターミナル」。ここでは複数の事業者が合同でIBM iのシステムを利用して港湾事業が行う。このターミナルに所属する鈴江コーポレーション株式会社(以下、鈴江様)の港運部 港湾システム課では、システムの安定稼働の維持と、基幹業務効率化のために日々アプリケーションの刷新と業務改善を担っている。この部署に在籍する西山豊様と峯虎太郎様が、今回、Cyber Portへの参加に取り組んだ。そして、鈴江様の取り組みを支援したのが、ベル・データ株式会社(以下、ベル・データ)のイノベーション推進室室長 出村宏志とDX推進部 デジタルテクノロジー開発課グループマネージャー 津﨑友一郎だ。

 Cyber Portの参加事業者は202361日時点で472社だが、第一次運用開始の202141日時点では約15事業者だった。鈴江様がCyber Portへの参加を検討したのは、同年7月に募集された「Cyber Port利用促進・運用効率化実証事業」の二次募集時点。この時、国交省からは、約半年後の20224月から実証を実施するスケジュールが提示された。

 鈴江様が実際に参加を決めたのは、募集開始から翌月となる20218月。そこから約半年で、実証実施に向けた準備を完了することが求められた。鈴江様はCyber Portとの接続に必要なAPI接続の仕様を確認し、基幹システムIBM iと連携させるためのプログラムを約40機能開発する必要があったが、これまで未経験の技術の使用が求められた。また、プログラム開発を全てアウトソーシングするのではなく、将来の運用を見据えて内製化の希望もあった。そこで、以前から付き合いのあるベル・データへ、繋ぐ技術と内製化する方法を求めて相談した。

 両社のスムーズな連携とベル・データからの技術支援、鈴江様の努力により、約半年という短い準備期間のなかCyber Portへの参加に成功。その後も、Webアプリケーションでイベント実行された際、他のアプリケーションへ、リアルタイムでHTTPを使用して通知するシステム「Webhook」を実装し、Cyber Port「ターミナル問合せ」機能を使用可能に。これにより、202351日より「料金の問合せと返答」に関する受付とやりとりをCyber Portで一本化することに成功。

 さらに、今回の取り組みで取得した連携技術を活かし、20233月に新たに実装されたCyber Portと行政手続等をオンライン処理する「輸出入・港湾関連情報処理システム(NACCS)」とのシステム間直接連携機能にも参加予定だ。

ここまでの道のりは決して平坦ではなく、両社は「互いの努力と協力体制、信頼関係があったからこその成功。また、今回の取り組みにより、双方に新たな発見や習得があり、期待以上の結果をもたらした」と語る。そう振り返る彼らの「共創ストーリー」を紐解く。

開発内製化の希望を知りベル・データが考えた支援方法

SCstory_2308_img005s.png- 西山様
国交省が主導するCyber PortというSaaSのサービスが立ち上がる知らせがあり、APIによる自社システムとの接続環境が用意されました。鈴江がある横浜の本牧埠頭の各事業者と協議し、参加を決定。しかし弊社は基幹システムにIBM iを使用しているものの、これまでAPI接続する機会がなく、技術的にCyber Portとの接続が可能か不明でした。そこで、以前からお付き合いがあるベル・データ様へ相談したのが経緯です。

 2018年頃、横浜と東京のIBM iの入れ替えを行った際、ベル・データ様にご尽力いただき、無事にハードの入れ替えとアプリケーションの移行が完了しました。ベル・データ様の技術力はもちろんですが、営業の方を含めて皆さん人柄が素晴らしい。また、弊社の環境を非常に熟知しており、真剣に考えてくれているのが印象的で、とても信頼しています。確認したいことがあり連絡すると、必ず実のある返事をいただきレスポンスも早い。なので、今回のCyber Portへの参加も、ベル・データ様に相談すれば大丈夫だろうという気持ちでご相談しました」

-峯様
「私は入社2年目の若手社員なので電話対応を進んで行いますが、ベル・データ様からの連絡が多い印象があります。そのため、入社間もない頃から、ベル・データ様は弊社と深い付き合いの会社なんだと思っていました」

SCstory_2308_img006s.png -出村
Cyber Portへの参加について初めてご相談いただいた時、凄く面白いチャレンジという印象でした。その後、APIの仕様に関する資料を確認し『これならできそう』だと感じました。鈴江様にできるという返答を早く伝えたくて、相談を受けてからすぐに津﨑にも共有し、2人で相談しながら情報を調べたことを覚えています。

 鈴江様から最初に相談を受けた際、『どの領域まで弊社でお手伝いするか』が重要だと思いました。お話を聞くと、外部エンジニアに全てお任せではなく、自社でも理解し、プログラム開発を内製化したいという意思をヒシヒシと感じたんですよね。なので、ご意向にあわせた技術支援する方法を考えました。

 そこで、鈴江様がAPIプログラム実装のスキルを習得、開発、メンテナンスに対応できるよう、弊社でサンプルプログラムを数本作って提供し、その後、スキル習得のためのレクチャーと質疑応答などをすることにしました。最終的には、鈴江様ご自身で約40機能を開発されました」

-津﨑
「実際のサンプルプログラムの開発では、まずはWeb会議で何度かヒアリングを行いながら開発しました。最初のサンプル完成後、ベル・データが所有している検証用のIBM iからCyber Portのテスト環境に接続し、うまく動いたのを確認しました。その後、実際にそのサンプルプログラムが鈴江様のIBM iでも問題なく動くか確認するため、鈴江様を訪問させていただきました。そこで、鈴江様にはパラメータ操作などの実際の作業をみていただいた他、プログラム開発のための具体的な手順もお伝えしました。その後は、Web会議やメールなどでサポートさせていただきました」

SCstory_2308_img007s.png-西山様
「弊社の内製化したい希望を汲み取り、こちらが求めていた通りにご対応いただきました。やはり、ベル・データ様に頼んで本当に良かったと思います」

「想像力」と「創造力」の発揮により予想以上の速さで開発が進行

SCstory_2308_img008s.png-津崎
「サンプルプログラム完成後、実際に業務で使うためには基幹システムのビジネスロジックを動かす必要があります。この基幹システムでデータの流れを作るのは、鈴江様じゃないと作れない。なぜなら、私たちが支援できるのはあくまでプログラミングまでで業務の内容までは把握していません。ベル・データ側で途中まで作り、その後の開発は鈴江様に引き継ぐ必要がありました。今回はこの業務のすみ分けが非常にうまくいったと思っています」

-西山様
「弊社が未経験だったFFRPG(Free Form RPG)のAPIに関わる部分をベル・データ様にしっかりとサポートしていただきました。それ以外は、日頃使用しているRPGⅢやRPGⅣの技術で繋ぐことが可能な仕組みでしたので、両社で対応する部分の線引きを明確にしたことで、非常にスムーズな受け渡しができたと思っています。

また、ベル・データ様からのレクチャーは非常に具体的で分かりやすかったです。資料も作っていただいたので、何かあった時には資料で確認して対処できます。それでも分からない時は質問すると、都度、しっかりとご返答いただけました。最後まで伴走していただいたので安心感がありました」

-出村
「鈴江様は、FFRPGを行うのは今回が初めてとおっしゃっていました。それまで使用されていた言語とは、ちょっと毛色の違う言語になるので、習得し横展開していただけるのかなという不安が若干ありましたが、対応が迅速で、予想以上の早さで開発されて非常に驚きました。」

SCstory_2308_img009s.png-西山様
「一時的にスポットで、外部のシステム要員の方に入っていただきました。その方にFFRPGを中心に対応していただき、私は業務ロジックをガリガリ書いていましたね。その方の能力にも助けられて、私も驚くほど早く横展開できたと感じています。

 他にも、今回はRDi(IBM Rational Developer for i RPG and COBOL Tools Edition)という開発ツールを使用したのですが、RDiを使用し、かつFFRPGとデータベース言語のSQLによる開発するという経験がなかったので、RDiの導入からベル・データ様に支援いただきました。ソース編集の方法やコンパイルの仕方など、一から実用レベルで使うところまでを手取り足取り教えていただき、環境構築できた点にも非常に感謝しています。

 SQLについても未経験でしたが、サンプルを用意してくださり、実際にSQLを実行できる環境を教えていただいたことで自分たちでも動かすことができました。今度はそれを、FFRPG上で書く方法を1つずつ教わり、丁寧に開発の手法や技術を教えていただいたことで理解が進みました。

 SQLのFFRPG上でのコーディングに関しては、新機能としてリリースされた『ターミナル問合せ』機能の運用に向けて準備する上で、昨年(2022年)の後半頃、当時、入社1年目だった峯にも1つ対応してもらいました」

-峯様
「当時はRPGもまだ34か月ほどしか勉強してなかった時で、知識があまりない状態でした。FFRPGを最初に見た時に、これまでずっとRPGⅢを書いていた人に比べると、RPGに慣れていない自分の方が抵抗は少なかったように思います。FFRPGでの書き方は、インターネットで調べると書き方が沢山出てきたので凄く書きやすかったです」
SCstory_2308_img010s.png-西山様
「峯は普段、ユーザーからの要望や問合せに対して、真摯に取り組んでくれています。社内の方から『新入社員の峯君は一生懸命やってくれるよね』というお褒めの言葉もいただきます。私たちが以前から使っているRPGⅢや、今回初めて使うFFRPGに対しても、自分でしっかり調べて取り組んでくれる。非常に真面目でよくやってくれています」

-峯様
「ありがとうございます!私からすると西山さんは、とても信頼できる上司です。いつも堂々としている西山さんですが、珍しく緊張しているときがありました。それは、Cyber Portの利用開始前に行った、関係事業者に向けて実施した説明会の時です。広い会議室には複数の事業者から沢山の方が集まりました。実際の画面をスクリーンに投影しながら説明し、事前に用意したデモ用のデータを用いてトランザクション処理する様子を見ていただきました。この時の普段とは違う西山さんの緊張している姿が印象深かったです」

 今回のプロジェクトで課題となった「RDi上でFFRPGとデータベース言語のSQLによる開発が未経験」以外にも、「REST APIで扱う、JSON型データの記述方式に関する知識がない」という課題もあった。しかし、こちらもベル・データの技術支援と詳細なレクチャー、鈴江様の努力により、無事に対応が進んだ。

新たな取り組みと今後の展望

両社の協力のもと、いくつかあった課題を乗り越え、無事スケジュール通りにCyber Portへ参加成功。するとその直後、国交省より新たな通知が出た。

-西山様
20222月、予定通りCyber Portへ参加できました。その後、また新たな機能の発表があり、それが『料金の問合せと返答』という、弊社の業務に関係する機能でしたのですぐに参加を決めました。

 課題となったのはWebhookの利用です。顧客から問合せが入ったというCyberPortからの通知をきっかけに、IBM iがすぐに動き出すという流れですが、その通知を受け取る方法は、Webhookかメールの2つの方法が用意されていました。

 弊社は外部からのメールをIBM iが受信して処理できる環境があったので、当初はそちらを選んでいましたが、新機能を使用するにはWebhookが前提ということが分かり、再度、ベル・データ様へご相談しました」
SCstory_2308_img011s.png-津崎
「鈴江様よりご連絡いただき、仕様を確認すると、鈴江様のIBM iにはセキュアにWebhookを受信できる環境が整っていることが分かりました。Webhookの開発は出村さんがメインで対応してくださり、RPGの中身の開発は鈴江様が担当されました。 前回同様、今回も作業のすみ分けが非常にスムーズでしたね」

-西山様
Webhookも無事リリースでき、Cyber Portからの通知を速やかに受信可能に。これにより、現在、顧客からの問合せにはIBM iが約5秒程度で自動回答します。お客様の待ち時間も非常に短くスムーズです。また、以前は問合せ業務が毎日20件以上ありましたが、現在は8割を自動応答できています。残り2割の自動応答が難しい内容にはメールか電話で返答しますが、日々の問い合わせ業務が大幅に削減し、効率化に貢献できました。

 弊社はCyber Port『ターミナル問合せ』機能を実現し、202351日からは『料金の問合せと返答』に関する受付とやりとりをCyber Port上での対応一本化しました。」

-峯様
「現時点で既にCyber Portを使用している部分だけでも非常に効率化できています。今後さらに展開を拡大し効率化を図れば、従来の業務にかける時間はより短縮され、コア業務に集中できるだろうと感じます。また、IBM iRPG画面を最初に見た時、黒画面で緑の文字が並んでおり、昔のシステムのようで驚きましたが、実際に使うと色々なことができることに気づきました。

 レガシーシステムと思われがちなIBM iですが、今回の取り組みでAPIとの連携により、今後のDXの動きにも十分対応できることが分かりました。入社間もない私はまだまだ勉強中なので、今後もベル・データ様との関わりが増えていくと思いますが、是非よろしくお願いします」
SCstory_2308_img012s.png-西山様
「国交省はさらに、Cyber Portと行政手続等をオンライン処理する『NACCS』とのシステム間直接連携機能の運用を開始しました。我々も今回のCyber Port参加に向けて手に入れたツールや培った繋ぐ技術を使い、NACCSとの連携にも参加予定です。今後も作業を進める際にはぜひ、ベル・データ様にご相談していきたいと思います」

-津崎
「今回の取り組みで、鈴江様より『迅速で実のある回答』だと言っていただきましたが、 私としては、むしろ鈴江様の作業スピードが速かったと感じています。鈴江様のスピード感ある進行に影響され、私も『もっと早く取り組み、早くお返事しよう』と思うことが多かったです。鈴江様は、いつも真剣で且つ凄い速度で、実のある業務アプリケーションを作っていると思います。そして新しいものにも意欲的にチャレンジするという気概を感じる取り組みもされています。今回の取り組みを通して、私たちも良い影響を受けました」

-出村
「今回やり遂げたことは、我々の自信にもなりました。この取り組みは、我々だけ、あるいはお客様だけでは実現が難しいものを、相互に補完し合うことで成功させることができたと思っています。内製化したいお客様に対するレクチャー方法や、サンプルプログラムをお渡し後に実務でうまく展開していただく方法など、お客様との連携の仕方について大変勉強になりました。Cyber Portとの連携や新機能の実装は、両社がうまくかみ合い『共創』することでできたと思っています。今回の取り組みをやり遂げたことで、『内製化したい』というお客様がいた場合、自信を持って『弊社でご支援が可能です』と言えるようになりました。本当にありがとうございました」

西山豊 様

鈴江コーポレーション株式会社
港湾運送事業本部 港運部 港湾システム課

1908年の創業以来、京浜エリアを中心に全国に物流拠点を置き、
グローバルな一貫輸送体制を築いている総合物流企業

峯虎太郎 様

鈴江コーポレーション株式会社
港湾運送事業本部 港運部 港湾システム課

1908年の創業以来、京浜エリアを中心に全国に物流拠点を置き、
グローバルな一貫輸送体制を築いている総合物流企業

出村宏志

ベル・データ株式会社
アプリケーションビジネス本部 アプリケーションビジネス統括部
イノベーション推進室 室長

津﨑友一郎

ベル・データ株式会社
アプリケーションビジネス本部 アプリケーションビジネス統括部
DX推進部 デジタルテクノロジー開発課 グループマネージャー

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