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「競争」から「共創」へ。
次世代を見据えた、NEXT ソリューション 開発の軌跡

これまで競合だったNTT グループ日本情報通信株式会社(以下、NI+C 様)とベル・データが、IBMPower 市場の発展に向けて戦略的パートナーシップを結ぶと発表した。その後、両社間で技術者交流や仕様検討などが行われ、2023年4月に業務提携に関する基本契約を締結。2024年1月より「PowerクラウドNEXT」の提供をスタートさせた。


この「PowerクラウドNEXT」は、サーバー、ストレージ、ネットワーク、アプリケーションを網羅した次世代統合型プラットフォームサービスだ。両社合わせて200名を超えるIBM Power のエキスパートが運用をサポートし、お客様の課題に応じて個別に解決策を提示。クラウドサービス開始から 200社以上の導入を実現し、さらなるシェアの拡大を目指している。


今回はプロジェクトを牽引してきたNI+C 様で『PowerクラウドNEXT』の基盤構築、サービス提供を担当される田部井貞治様、契約関連や運用サポートを担当される塩谷はるな様、そしてベル・データで営業支援チームを率いる松永道子、システム移行作業、導入サポートを担当する戸田司の4名から、今日に至るまでのプロジェクトの歩みについて話を聞いた。

驚きの連続だった協業発表

共創ストーリーの始まりは、両社の経営陣らが「Power クラウドの先行きをどう見ているか」といっ た議論を交わしたところからだった。Power ユーザーのニーズが多様化する中で、「Power クラウド」をIBM i/AIX という限られた領域にとどめるのではなく、Power の強力な基盤を活かし、ユーザーが求める多様なサービスを提供できるプラットフォームへと進化させることが、市場拡大と長期的な安定性を確保するための鍵であるという結論に至りました。この戦略に基づき、NI+C 様とベル・データは連携し、両者の技術と強みを組み合わせることで、さらなる市場拡大を目指す共創へと進展しました。

田部井様,塩谷様

これまで両社は競合だったわけだが、一転して協業する立場に変わった。協業について、当時はどのような心境だったのか伺った。

-松永
「驚きましたね。協業に関するプレスリリースを両社が出したのが2023年4月25日。私と戸田のところに話が来たのは、その1週間前のこと。それまで何も聞かされていなくて。田部井さんはもう少し前に知らされていたんじゃないですか?」

-田部井様
「実はそこまで大差ないんですよ。私が知ったのは3月頃なので。上層部間では半年以上前から話を進めていたようですが、その間もベル・データさんとは競合している間柄だったので、驚くのも当然だと思います。ただ、IBM Power市場という狭い世界でシェアを奪い合うより、協業していくほうが未来のビジネスを創っていくうえでは好材料になると考えていたので、私自身はポジティブに受け入れることができました」

-松永
「市場動向を見ていると、競い合っている場合ではない空気感がありましたよね」

-田部井様
「そうですね。競合でいる分にはまだ良いのですが、状況によっては別のOSに乗り換えられてしまう可能性もあると思います。そうなるとビジネス自体がなくなってしまうわけですから、やはり協業していくのは業界にとっても良い話と感じておりました」

-戸田
「個人的には、そこまで競合としてバチバチだった印象もないんですよ。NI+C様は大手企業、我々は中小企業がメインの顧客層だったので。だからこそ、協業によってお互いに足りないところを補完しながら、双方の強みを活かして共にシェアを広げていけるのではと思うんです」

-塩谷様
「私は皆様とは状況が違っていて、4月の協業発表の段階ではプロジェクトに参画していなかったんですね。だから、「そんなことになっているんだ」くらいの感覚でした(笑)。でも、関わるようになってからは怒涛の日々でしたね」

-田部井様
「遅れてプロジェクトに参画した塩谷ですが、我々がサービスの構想を考えている中で膨大な情報や決めごとを整理してもらうという、最も大変な役割を担ってもらっています」

企業文化の異なる2社が協業することで生まれるシナジー

協業発表からサービスリリースに至るまでの約9ヶ月の間に両社の距離がグッと近づいたエピソードがある。パートナーシップ締結発表後の5月に熱海で合同合宿が開かれたそうだ。交流する中でお互いの技術についての情報交換をし、自社の強み弱みが見えたというエピソードについて、聞いていく。

田部井様

-田部井様
「このときは両社からそれぞれ15名程度選ばれて、現状把握と役割分担のための研修と親睦会が行われました。それ以前も細かなやりとりは行われていたのですが、ここまでじっくり話をする機会はなかったので、お互いの理解を深められたと思います」

-戸田
「実際、熱海の合宿を経て、ベル・データ側の意識が大きく変化した印象があります。それまでは目の前の目標を追いかけることに必死で、中長期的な視点で事業を考える機会がほとんどありませんでした。一方のNI+C様はNTTグループというバックボーンを活かし、大きなビジョンを描いて、お客様に盤石なサービスを提供していることがわかったのです。また、今後の展望についても話を伺って、我々も視野を広く持たなければいけないと考えるようになりました」

-松永
「NI+C様とベル・データでは企業文化がまったく異なるので、学ぶところはすごくあります。例えば、勢いだけで物事を進めてはいけないとか(笑)。NI+C様のように安定してサービスを提供するためには、こういう管理が必要になるのかと思わされることが少なくありません」

-戸田
「運用に関しては、『ルールをしっかり守ることで、良い結果を生むことができる』という学びがありましたよね」

-田部井様
「でも、ベル・データさんのフットワークの軽さや、お客様に対する柔軟性の高さは、我々が見習わなければいけないポイントだと思います。弊社は慎重になり過ぎることも多く、どうしても身動きが重くなりがちなので。また、我々はサービスの運用に重きを置いていたこともあり、お客様目線が不足していた部分がありました。今回の協業を経て、その課題が浮き彫りになったと感じています」

-戸田
「熱海合宿の段階でセールスチーム、アプリケーションチーム、運用サポート含む基盤チームに分かれて話し合いをしたのですが、その段階では何をするのかの抽象度がまだ高かったんですね。そこでチームごとに分科会を何度か開催して、2024年1月のサービスリリースに向けて具体的な施策に落とし込んでいきましたね」

-田部井様
「どうやって基盤を運用するか、ブランドイメージをどうするか、どういう契約で売っていくか。そういったものを各チームで決めていきました」

-塩谷様
「私が本格的に関わり始めたのは、2023年の冬からです。サービスの内容や両社の役割分担がおおよそ決まった段階で、運用契約や維持管理についてもまとめていく必要が出てきたので、それらをまとめて約束事として文章化していく役割を担いました」

-田部井様
「ただ、文章化して終わりというわけでもないんですね。契約内容を精緻化していくとイレギュラーなことはこぼれ落ちてしまうので、実際に契約を結ぶ際には運用について見直しを図る必要も出てきました。そのあたりの調整も塩谷にカバーしてもらっています」

図1.Power クラウドNEXT 2023年4月のパートナーシップ基本合意契約・締結から、リリースまでの道のり
図1.Power クラウドNEXT 2023年4月のパートナーシップ基本合意契約・締結から、リリースまでの道のり
図2.Power クラウドNEXTを数字で見る
図2.Power クラウドNEXTを数字で見る

約半年間の開発期間のうち、サービス改定/機能追加は37項目に及んだ
※(図1,図2,日本情報通信株式会社様ご提供)

塩谷様

カルチャーや事業戦略が異なる両社。協業していくうえで難しいと感じることはあったのだろうか。

-松永
「各社で仕様に対する考え方に違いがあるので、その擦り合わせが大変でしたね。それぞれにポリシーを持って取り組んできたことでもあるので、なかなか答えを出しづらいというか」

-田部井様
「それについては、お客様の要望にどう応えていくかが意思決定のカギになるのかなと思います。例えばサービスの売り方についても、弊社は導入後の運用を重視していたため、いくつかのオプションをセットにしていたんですね。ただ、そうするとお客様によっては不要なものが発生することがあります。そこで『PowerクラウドNEXT』では、モジュールごとに金額を定めて必要なものだけ購入できるセミオーダー型を採用しました。これはもともとベル・データさんが実践してきた方法で、そのほうがお客様にとっても提供できる価値が高いだろうという判断のもとに進めています」

-松永
「これまでのベル・データの取り組みが、ある種の事例となって意思決定のあと押しになったということですね。運用面で工数が増えるのではないか、といったネガティブな声はありませんでしたか?」

-田部井様
「そこは大きな争点にはなりませんでした。というのも、IBMのOSは均一化しやすい特性があり、運用や操作感に大きな変更は生じないからです。ただ、契約に落とし込む段階でこういうメニューを追加したいという要望をお客様からいただくことが増えたので、営業を担当される松永さんと契約を処理する塩谷は大変かもしれません」

-松永
「塩谷さんにはいつもお世話になっています。嫌われるんじゃないかと不安になるくらい、無茶なお願いをさせてもらっている状況です(笑)」

-塩谷様
「いえいえ(笑)。ベル・データさんの販売力は本当にすごいなと感心しています。プロモーション、イベント、Webサイトとさまざまな手法を駆使して販売活動を行っていますよね。それはNI+Cがついつい後回しがちなことでもあるので、ベル・データさんがきちんと計画を立てて販売してくださるのは、我々にとって大きな強みだなと。この勢いを止めないためにも、お客様からいただいたフィードバックは今後のサービス改善にできるかぎり活かしたいと考えています。全体の最適化という観点で見ると、まだまだ課題も多いですから」

-松永
「そうですね。特にこの1年は、両社で足並みを合わせてスタートラインに立つことが目標だったと思うんです。これから2年、3年と時間を重ねる中でお互いの雰囲気も今以上にわかってくるはずなので、うまくコミュニケーションを取りながらサービスを向上させていけると良いですよね」

ようやく立てたスタートライン。これからさらなる飛躍を!

両社の協力のもと、スピード感のある開発期間を経て、2024年1月に「PowerクラウドNEXT Gen 1(Generation 1)」のサービス提供が始まった。

戸田さん

-戸田
「まずはクラウドサービスを無事にリリースできて、しかもお客様にご利用いただけていることに手応えを感じています。現時点では、幸いなことに大きなトラブルもなく運用できています」

-松永
「本当にそうですよね。契約書の草案すらない状況からサービスが開始されて、今では契約を締結し本番業務が開始しているお客様がいるわけですからありがたいことだなと。加えてNI+C様の協力を仰げたことで、販売からサポートに至るまで手厚く対応できる体制を敷くことができたのも、協業の恩恵の1つなのかなと思います」

-塩谷様
「現在『PowerクラウドNEXT Gen 1(Generation 1)』は23社にご利用いただいています。2024年1月のサービスリリースから短期間で数字を伸ばすことができたのは、本当にすごいことだと思います。最悪の場合、1社や2社の契約で留まる可能性もあったわけですから。ただ、お客様から具体的な評価はまだいただけていませんよね?」

-松永
「そうですね。会社のシステム基盤を切り替えることになるので、私たちと一緒にお客様もいろいろ試しながら走っていると言いますか。長くご利用いただく中で、さまざまな声が聞こえてくるようになるのかなと思います。ただ、順調に契約数が増えているということは、市場でも概ね評価いただいているという証でもあるのかな、と」

松永さん

これからも柔軟性とスピードを持ってお客様のパズルを埋めていく

2025年には、「PowerクラウドNEXT Gen 2(Generation 2)」のサービス提供も予定しているそうだが、具体的にどのような点が変わっていくのだろうか。

-田部井様
「Gen1はシステム基盤の構築が中心でした。Gen2では、その基盤をベースにお客様のビジネスを活性化させるアプリケーションやサービスを提供していくことが目標です。また、LINEをはじめ各企業から提供されているサービスとのAPI連携も実現したいと思います。これからの1年でさまざまな検証を行いながら、マイクロサービスの提供を実現していく予定です。それが結果として、IBMのOSを使い続けていただく理由にもなるので」

-松永
「とはいえ、Gen1からGen2に移行すると考えると少しイメージが違うかもしれません。Gen1にはまだまだ強化しなければいけない点があるので、複数のチームを走らせながら基盤の強化とサービスの拡充に向けて取り組んでいく考えです」

-戸田
「国内市場No.1は、絶対に実現したいですよね。そのうえでお客様のビジネスに貢献できるように、最先端技術の提供とサービスの安定稼働の両立を目指したいなと思います。まだ実現できていないことでいうと、災害対策の強化が挙げられます。また、提供できるサービスの数を増やしていく必要もあると感じています」

-田部井様
「私は、IBM i の市場を少しでも拡大していきたいと考えています。IBM iのOSは他社サービスと比較しても優位な点が多いのですが、ご利用いただいているお客様が高齢化しており、メンテナンスが難しくなっているという課題もあります。このままだと扱える人がいなくなってしまうのではないか、と危惧されることもあるんですね」

-戸田
「お客様の声として後継者がおらず社内での運用、開発が困難になっていると聞きます。学生時代に学んだ開発環境とギャップがあり、未知の世界のように感じられることが多いようです」

-田部井様
「まさに戸田さんがおっしゃる通り。ただ、AIの技術が発展する中で、基盤の監視や運用を自動化できるようになると思うんですね。もしかしたら、顧客の要望に応じたプログラムがAIによって自動作成される時代が来るかもしれません。そうなったらIBM iの良さが生きてくるはず。その未来を実現するためにも、『PowerクラウドNEXT』のシェア拡大に向けて注力していけたらと考えています」

-塩谷様
「田部井の話にもあるようにIBM iの市場は特異な状況に置かれているのですが、長く愛用しているお客様も大勢いらっしゃいます。そのため、我々に求められているのは、安定運用を提供し続けることだと考えています。ただ、お客様はIBM iだけでなく、複数のシステムを用途に応じて使い分けているケースもあり、システムの接続を容易にするソリューションの提供や環境の整備なども取り組む必要があると思うんです。そのようなことも我々の力で実現できると良いですよね」

皆さん

さまざまなカテゴリの技術者同士が市場全体の活性化とお客様に安心を届ける想いのもと集結し、新たなサービス「PowerクラウドNEXT」が誕生した。

NI+C様とベル・データの共創の掛け算は、お客様のシステムに継続的な可用性を提供する「IBM i / AIX」が持つ、「堅牢さ」と「将来性」を再確認させてくれたのではないだろうか。テクノロジーの進化に合わせて継続的に成長していく「IBM i / AIX 」は、令和の時代においても歩みを止めず、新領域を切り拓いていく。

田部井貞治 様

日本情報通信株式会社
クラウド事業本部 クラウドサービス部
第四グループ グループ長

塩谷はるな 様

日本情報通信株式会社
クラウド事業本部 クラウドサービス部
第1グループ

松永道子

ベル・データ株式会社
Power事業部 部長

戸田司

ベル・データ株式会社
サービス・デリバリー
第1インフラストラクチャー・サービス 部長

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